リハビリ指導に対応する
今回は―――
もうひとつの「リハビリに関わるフィットネス現場での対処」に焦点を当てたいと思います。
整形外科のリハビリ料の設置基準が厳しくなり、小規模なリハビリ施設では、従来の保険請求ができなくなり、開業医は「鎮痛/消炎」などの処置のみしか算定できないことが多くなった、ということです。
つまり、
従来は、リハビリと称して簡単な処置で保険請求が行えたものが、本格的にリハビリが行える施設・人員が確保できないと、保険対象とならない。(商売として成り立たなくなってきた)
ということです。
このことは、
ということにつながってきます。
医療機関でのリハビリで、一人ひとりにマンツーマンで―――例えば、上肢や下肢の機能回復でPNFパターンによるエクササイズを行なっているケースは、ほとんどありません。
一人ひとりにそのようなことを行っていたのでは、あまりにも需要が大き過ぎて負担となってしまうからです。
マシーンを使って運動させたり、ワンポイントでアドバイスする程度でないと、多人数をシステマチックにこなすことができないといった事情がある、と思われます。
このことは、マンツーマンで指導する個人指導の専門家、つまりパーソナルトレーナーが、このリハビリに関わるワークをもっと請け負うべき可能性を示しています。
これは―――かなり大きなニーズが潜在していると思われます。
当然、
フィットネス施設で行なうには、歩行困難な方や介護の方は現実問題として難しいが、骨折・捻挫・脱臼などの外傷事故や、通常の機能回復の問題は、
エクササイズの専門家であり、適切な個別プログラムを提供できる人材が、医療機関と提携してリハビリ系のアプローチを行なうべきなのです。
体軸を確保して、リ・コンディショニングを行える人材が、今後はもっと求められることは確かです。
医療機関のリハビリ施設(ハード)は、必ずしも十分ではありません。フィットネス施設のハードを活用できる環境が求められます。
膝(靭帯再生)の手術後(十数年前)、大病院のリハビリ施設は不十分なものでありました。
他の大病院でも似たり寄ったりで、通常のトレーニング施設でエクササイズをやりたくて仕方なかった記憶があります。
私は、同室の患者にリハビリのアドバイスを出過ぎない程度に行っていましたが、
● リハビリ・プロイグラムは、その患部へのアプローチが主体で、全身の機能回復を促すといった『全面性の原則』を踏まえたものでは ありませんでした。
● 協働筋(共同筋)・拮抗筋・対応筋などの観点から捉えたプログラムは、ひとつもなかったのです。
また、 私自身の患側のサイズが大幅に落ちたので、
● 対応部位の運動刺激をやってもらいたかったが、それが可能な人材はいませんでした。
● 患側の大腿部のサイズ低下を最小限にするために、健側のレッグ・プレスや対応筋の上肢筋群(広背筋など)強化のために、ラットマシーン・プルダウンなどをやりたかったのですが、運動器具がありませんでした。
○ このときは「イメージ」で「患側のエクササイズ」を行って、サイズの低下を食い止めたかったのですが、現実には大幅にサイズが低下しました。
このことから、フィットネス施設における『リハビリ』主体のパーソナル指導の必要性を、実感しているのです。
それは―――
● 膝のリハビリには、『レッグ・エクステンション』よりも、まずサイズアップとしての『レッグ・プレス』が求められる(リハビリ・プログラムでは、レッグ・エクステンション系のエクササイズが多い)。
● ゴム系エクササイズ(セラバンドなど)をリハビリでは多用するが、このようなプログラムでは、機能回復が遅くなる可能性がある(これについては、「非機能的エクササイズ」となって、マイナス傾向の機能低下を起こします)。
● 機能不全の部位に焦点を当てる傾向のあるリハビリ・プログラムを、その部位に関わる『連動連鎖(キネマチックチェイン)』の観点から対処できる専門家の指導を必要としている。
といったことです。
前述したように、医療機関の現場では、一人ひとり懇切丁寧にマンツーマン指導できる環境下にある例は少ないと思われます。
例えば、拘縮している筋群があり、それを解消するには単なるストレッチではなく、「筋膜」の『リリース』が必要と思われます。
通常に行っている「ストレッチ」では、30秒間も行なえば、「かなり長い」と感じられます。
だが、「筋膜ストレッチ」や「筋膜リリース」では60秒から120秒間もの時間が必要となります。
多人数をこなす医療現場のPTなどの指導者では、一人ひとりに時間をかけて対処することは現実にできないであろうと思われます。
を時間をかけて行える。つまり―――個別のニーズに応えられることになります。
また、
実際には「運動エクササイズの専門家ではない医師」の指示に従って行うことが前提となる 医療機関でのリハビリ・プログラムでは、
● 全面性や個別性、特異性といった基本原則に対応しない傾向があるようで(これは、私自身の経験上のものなので、全てに当てはまることではない)、
● マイナス筋連鎖や骨連鎖を引き起こすエクササイズなどが、組み込まれてしまうことがあります。ゴム系エクササイズなどは、その典型例です。
これについては、日本ホリスティックコンディショニング協会の岩間副理事長の体験を示しておきたいと思います。
岩間氏が、まだ日本スポーツ科学センターに顔を出しているときのことです。ある競技のアスリートが、リハビリを長い期間受けていました。
基本的にそれぞれの競技団体やアスリートには、専属のトレーナーなどがいることから、要請されない限りは、こちらから口を出さない暗黙の了解事項がありました。
たまたまその競技の関係者と顔見知りであったので、リハビリ中のアスリートを診ることになりました。
このアスリートは リハビリ中の機能回復が思わしくなく、停滞している状況にありました。
結果、部位対処の観点から、身体全体を連動連鎖の観点で捉えなおして、通常にエクササイズできる部位は、しっかりとアスリートの視点で行わせるプログラムに変えて、
「リハビリ・ルーム」ではなく、本格的なトレーニングとしてのエクササイズを「トレーニング・ルーム」で行うことで、目覚しい回復を示し、そのアスリートは国際大会に復帰したのです。
もうひとつ 私の体験例です。
オリンピックに出場したある女性アスリートは、大病院でPNFの専門的な指導を、それを専門に個別指導していたあるPTから受けていました。
それは、「全面性」「特異性」を無視したプログラムで終始しており、筋のバランスが崩れるからと、健常側の通常のエクササイズは行わせていなかったのです。
そのため、一般人と異なり、アスリートとして身体全体の機能低下が著しく、それを見かねたあるドクターを介して、私が指導することになったのです。
○ ほぼ通常に近いプログラムで、健側は徹底的に鍛えこんで、連動性―全面性を回復させていった。
○ 脚のリハビリであったが、ランニングは 衝撃が大きいのでできなくとも、スクワットは衝撃が大きくないので、行える。
⇒ このことは、自分自身の膝のリハビリで体験していた。術後2~3ヶ月で140キロ程度のパラレル・スクワットを行っていたが、走ることはできなかった。
○ 股関節伸筋群主体のデッドリフト(ルーマニアン・スタイル)や膝などで衝撃を受けないスタイルのハイ・プルなどを重視した、通常のリハビリ・プログラムとは、明らかに異なるルーティンを組んでいた。
その女性アスリートは、1ヶ月程度で150キロのフル・スクワットでプログラムを組めるようになり、再びオリンピックに出場しました。
このとき、もう一人リハビリを受けているアスリートがいました。
一度私のリ・コンディショニングを同じように受けたのですが、「この状態では、アスリート・レベルとしての回復が遅れる」と指摘しましたが、
そのアスリートは 大病院でのPNF指導を受け続ける選択をしたのです。
そして―――そのまま現役として復帰することはなく、引退していきました。
私は現在、治療系の身体調整を行っていますが、明らかに「エクササイズ」を必要としているクライアントが多いことを実感しています。
体軸が整って、全身に生体エネルギーが循環している状態に回復したら、継続的なエクササイズを適切に行えるパーソナルトレーナーが対処することで、目覚しい効果を示すことができるであろう、と思われます。
● 多くの糖尿病患者などは、身体がエクササイズを求めていることが解る。
● ガン患者においても、自分自身の細胞をガン化させてしまう精神的なストレス対処のために、定期的・継続的なエクササイズの実施が必要となる。
こういったケースを、数多く診てきています。
このようなことから、リハビリにおいては、次のことをもう一度認識しておきたいと思います。
● 医療機関のリハビリは、保険適用の範囲が制限されて、十分な対応ができないケースが増えている。
● リハビリを行う運動施設は、従来の簡易な運動機器よりも、フィットネス施設で行ったほうが多面的な刺激を与えられて、効果的に回復を促せる可能性が大きい。
● 「PNF」や「様々な体軸エクササイズ」をプログラムに組み込むと、回復効果が大きい。だが、これはパーソナル指導なくしては行えない。
● しっかりとした体軸を確保して、運動効果を高めるためには、それ相応のレベルにあるパーソナルトレーナーによる個別指導が求められる。
● 病院勤務のPT(理学療法士)は 「医師の指示によって・・・」と指導条件が課せられています。しかし、医師は「運動指導の専門家」では ありません。 運動指導」は その専門家(パーソナル指導者)が担うべきものなのです。
以上のことから―――
今まで以上に、リハビリ系の分野での連携・指導のニーズが高まってくると思われます。これは、時代の必然である、と思われるのです。
さて、上級ホリスティックコンディショナーである小泉智明氏から、「自宅リハビリ介護」の報告を頂きましたので、紹介します。
以下、本文
今日はご報告があり、メールさせていただきました。
いま、認知症で車いす生活を送っている方の、運動指導をさせていただいています。
介護の負担を減らす、ご本人様が少しでも苦がなく日常生活を送れるよう、
また、調和的な老化を目指しての運動を目的とされています。
と言っても、できることに限りがあるので、これまでホリコンやドラセラで学んだものを、私なりにアレンジして サポートさせていただいています。
今日、娘さんからメールがありました。
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あれから小さな奇跡がありました。
老父の中で何かが目覚めたようでした。
トレーニング後いつもすぐにオシリを点検するのですが
(変な話ですみません)昨日は湿っていませんでした。
なので、しまおうとしたら老父が待ってくれと言うのです。
男性部分を露出したまま 老父は立っては座り、立っては座り
何を考えているのかな…と思ったら・・なんと!びっくり
立ってお小水をしたのです。
ちょうど出ていく先生の車を見ながら
どんなにか気持ち良かったことでしょう。
おしめになって三年以上です。
感動しました。
先生にメールしよう!と思い・・遅くなりました。
すみません。
老父は今日もそれなりに元気です。
先生のトレーニングのおかげです。
ありがとうございます。
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ドラセラとしての私のレベルは、まだまだ他の方に遠く及ばず、またうまく調整できているのかもわかりません。
それでも、ご本人様の頑張りと、ご家族の献身的介護で、少しずつよい方向へ向かっているみたいです。
私が行っていることなど、たかが知れているのは百も承知ですが、先生からいただいている多くの学びが、少しでもお役に立てていることがうれしくてメールさせていただきました。
先生のブログにもある、医療費の問題についての記述、興味深く拝見させていただいています。
私は、地方でも活動していますが、まだまだ運動指導者が少ないようです。
今後も、多くを学ばせていただき、この方をはじめ、地方でもクライアント様のため、微力ながら尽力していきます。
取り急ぎ、ご報告させていただきました。
いつも、ご指導いただきありがとうございます。 小泉