《 サイキック・マフィア 》
ラマー・キーンという方が書いた「サイクック・マフィア」(太田出版)という本を読みました。
これは―――
「霊能者」「霊媒」という人物が、いかにして人々を騙してきたかを、15年間にわたって実際に「霊媒」となって、多くの方を騙し、大金を搾取してきた実態を記した実話であり、世界に警告を与える書籍です。
2001年に初版が発行されて、それ以降は重版していないようで、今では1万円以上の値がついています。
著者のラマー・キーンが記す、「交霊会」で莫大な寄付金を集めてきたその実態とは・・・・
まず、「交霊会」に出席する人物の、あらゆる情報を探ります。
その基本は―――
「交霊会」に参加するには、なぜ「参加する気になったのか」「どういうことを亡くなった方から聞きたいのか」「どういうアドバイスを、亡くなった親族から聞きたいのか・・・」などなど、参加者本人が聞きたいことを、事前に知っているという、単純な方法があります。
参加者は、事前にこれらの情報を主催者(騙そうとしている側の人物)に、提供していることが、その前提にあることは、冷静に考えてみれば、判りそうなものですが、実際には―――
「今、ここにあなたの亡くなられたご主人が現れています・・・」
「そのご主人は、こう申しています・・・」
このような単純な方法が基本にあります。
そのうえで、エクトプラズマという「霊体」を見せますと、本当のことと信じてしまうのです。
エクトプラズマというのも、すべて偽物です。
「霊体のエクトプラズマ」のように見えるものを使っていました。
なによりも教会で行う「交霊会」とは、照明を消して、暗い中で行なわれます。
「霊」が出てくると―――
その「霊」は、おもむろに話しかけます。
「〇〇(特定の人物の名前)・・・・今やるべきことは、〇〇である・・・」
ここでは、事前に収集した情報から、実際に困っていることを述べて、こうしなさい、と告げるだけで、当事者本人は、驚愕して、すっかり信じ込みます。
そして、教会には多額の寄付が寄せられるのです。
著者本人の得意技は、ブリキのトランペットが、空中に浮かび上がる仕掛けをして、死んだ親族の霊が出てきて、話しかけます。
著者は、得意の「腹話術」で、あたかも亡霊が話しかけているように仕向けています。
この手法で、「これは絶対に虚偽である。私は、その嘘を見破ってやる」として、乗り込んでくる科学者と称する人も、多数が参加してきましたが、
その嘘を見破ることができずに、「これは本物である!」と公表します。
それによって、ますます一般大衆は、本物であると思い込んで、高額な寄付を教会に振り込んでくれるのです。
このような交靈会を行う教会は、全米の各地にあり、英国にもヨーロッパ諸国にもあるといいます。
全米の交霊協会は、お互いにネットワークを通じていて、参加者の家族、親族など、あらゆる情報が共有されています。
亡霊に興味のある人物は、あらゆる面からその実態を探り、「何を知りたがっているのか」「どのような悩みを抱えているのか」などをキャッチしているのです。
あとは、暗い中で行なわれる「交霊会」のなかで、霊を出現させて、腹話術をもって、亡霊が話しているように見せかけて、参加者の全てを騙しているのです。
これに対して、「これは絶対に嘘である。インチキだ!」と叫ぶ人がいると、すぐに教会の外に引きずり出して、「二度とここには、来るな!!」と脅します。
著者は、「少しは本当の霊能力がある方がいて、本当のことを言っているケースもあるのではないか」という疑問にも、「すべてが、嘘である!」と指摘しています。
このような実態から、金銭は次ぎから次へと入ってきます。
まさに「濡れ手で粟」状態で、いくらでも善良な男女が騙される続けていくのです。
が、ある時、著者は心の優しい、まったく穢れのない老女と巡り合います。
莫大な遺産を相続している老女の息子ということになり、養子縁組で本当の息子になります。
ある時、日ごろから人を騙し続けていたことに、常に後ろめたさが付きまとっていましたが、義理の母となった人物に感化されて、その実態を打ち明けます。
その義理の母は、何事もなかったかのように振る舞い続けることに、痛く反省させられれて、全てを公表しようと決意します。
内情を暴露しても、驚いたことに、誰一人として―――
そんなはずはない。そう言っている「あなたがおかしい!」と反論されたのです。
今まで莫大な金銭を教会に寄付してきた人にとって、「そんなはずはない!」と否定されるのです。
自分が信じていた根底をくつがいされることを、そのまま受け入れることができないのです。
さらに―――
教会の評議会のメンバーに、その騙しの実態を晒したにも関わらず、
そこでもその多くは、自分が多額の私財を投げ出しているのにも関わらず、その事実を信じようとしない意外な実態を、著者は知ります。
このことを暴露したことで、問題が起こります。
この実態を晒したことは、同業者には、当然ですが怒りの反感をかいます。
当たり前ですが、「心霊教会」で人々を騙していた方々は、著者を狙ったようです。
ある時、銃で打たれます。
脅しのつもりか、壁に銃弾がめり込んでいました。
その後、著者は居住地を変えて、殺されるのでないかと怯え、3年間身を潜めていましたが、この事実を書籍で公表すべきと思い至り、出版社も名乗りを上げて出版にこぎつけたのです。
こうして、自分がどのようにして、神霊協会を造り上げて、多くの人々を騙してきたかを公表しました。
この書籍がどれほど広まったかは、定かではありません。
しかし、邦訳されているのですから、英語版だけでなく、他の国でも広まっているのかもしれません(但し、日本語版は初版だけのようです)。
人を騙すとなると、マジックがあります。
明らかに本当ではないが、人々にはそのタネ明かしをすると「なーんだ!」と、簡単に納得できますが、そのタネを知らないまでは、不思議な事象に騙されます。
日本のテレビでも、各局の看板ショーの世界的なマジシャンが契約して、数々のマジックを示してきました。
どれも「摩訶不思議」なものを見せられて、国民は度肝を抜かれますが、実際にはすべてにタネがあります。
世界的なマジシャンの映像の分析をした中には、その画像に映るシロウトの出演者が、同一人物で幾度もそのマジックの中に登場していることを指摘したものもありました。
明らかに、「やらせ」なのです。
本ブログでも指摘しましたが、デビット・カッパーフィールドが登場した時には、私も驚かされました。
実際にそのショーを観ましたが、空中浮揚では特許を取得した肉眼では見えにくい金属で身体を浮かしていました。
また、デビット・カッパーフィールドは双子で、一瞬でその場所から消えて、離れた場所に移動するように見せるもの、二人がいれば可能となります。
例えば―――
ミスターマリックが、初めてテレビに登場した頃は、あまりにも凄いことを引き起こすので、「本当に魔術」だと思いました。
深夜番組で、パチンコ屋に行き、ゲストが座る台のパチンコ台に手を当てると、たちまちパチンコ玉が次々を中に入るようになり、大当たりとなるのを見て、驚愕したことがありました。
その後、マリックのマネジャーが、パチンコ台の中にいて、当たりを出せるように仕掛けをしたことを告白して、そのマジックの実態を知りました。
さらにまた、「スプーン曲げ」で日本国中にそのブームを巻き起こしたユリゲラーは、元は大道芸人でした。
来日のときにミスターマリックに対面して、ミスターマリックが、ユリゲラーにマジックを見せます。
するとユリゲラーは驚いて、絶対に人のいない空間に連れていき、そのタネを教えて欲しいと頼んできたといいます。
すべてには、タネがあることを十分に知っていることを物語っています。
こうなると、亡くなった故人を出現させて、神霊現象を引き起こす神霊マジックなども、いくらでも演出できるかもしれません。
敬虔な神事(かみごと)を通して、信じ込んでいる人を騙す神霊協会の存在は、今後も決して無くならないと思います。
裏の実態を知れば、このことはよく解ってきます。
本の著者が「狂信者症候群」と呼んでいる実態のように、その仕掛け〈タネ明かし〉を知らせてもなお、「そんなはずは、ない。あり得ない・・・」とする心理状態に陥っている人には、救う手立てはないのかもしれません・・・・・。
2023年2月7日記