≪ 肩の痛みと原因 その2 ≫
11-7-16
肩の痛みには 例外なく 肩甲骨の位置が変位している―――と 述べました。
肩甲骨の位置の変位とは、肩に関わる様々な筋のバランスが崩れていることを示しています。
過緊張した筋群と 抑制弱化した筋群とがあって、肩に関わる関節(4か所)の正常な動きを制限している―――とも 述べました。
では、
対処としては どういったアプローチがあるのか―――ということですが、次のようになると思われます。
① 過緊張した筋・筋膜組織をゆるめる―――ストレッチや マッサージ系の手技 あるいはPNFストレッチや筋エネルギーテクニック、操体法などを用いる。
註:
PNFストレッチのホールド・リラックス法は、オステオパシーの筋エネルギーテクニックと ほぼ同じ手技です。
② 抑制弱化した筋群を強化するために、その筋群に対しての 筋力エクササイズを行う。
③ 肩に関わる関節―――肩甲上腕関節(いわゆる肩関節)、肩鎖関節、胸鎖関節、肩甲胸関節―――の可動性を回復させるために、関節を他動的・自動的に動かす。
④ 肩・肩甲骨周辺に関わる椎骨(脊椎の頸椎や上部胸椎)を、正常にするために整える。
このように分類できそうです。
簡単に言えば、上記①と②は『筋アプローチ』で、筋肉などの軟部組織に対処するものです。
③と④は、『関節アプローチ』で、肩関節に関わる骨組織を正常なポジションに回復させることで、
● それに付随する筋・筋膜などの組織も 自動的にバランスを回復する―――という観点からアプローチするものです。
これら全ては、構造体(肉体)への対処方法です。
今回は ここに焦点を合わせます。
まず、
○ 過緊張した筋や筋膜組織などを ゆるめるアプローチは、有効なのか否か―――ということですが、
それは―――過緊張した筋をゆるめるストレッチや マッサージ系の手技で対処することは、以下の条件付きで「有効」となります。
● 適切に 過緊張組織の筋に対処する(抑制弱化筋に対処すると、逆に悪化します)
● 過緊張組織を誘発している他の組織の緊張―――に対処する(これが適切でないと、多くの場合 対処は一時的なものとなります)
これについて、以下解説していきます。
肩に関わる組織の「過緊張/コリ」は、
○ 人体の防御反応として緊張を強いられている
ということが、ひじょうに多いのです。
どういうことかというと―――
骨盤の仙腸関節は、それ自身の歪みが原因ではなく、他の部位の歪みの存在を教えてくれるモニターといえるものです。
仙腸関節を正常化する―――つまり、「骨盤を正常な状態に回復する」ということだけでは、問題は解決しないのです。
さて、
骨盤(仙腸関節)の歪みがあると―――それは同時に、肩のつけ根にある関節の可動性を制限してしまいます。これは、人体の反射的な作用です。
頸椎などが必要以上に歪まないように 頚の組織を緊張させて防御します。それが―――頚の可動性を制限しているのです。
理由なく、組織は過緊張はしていないのです。
● 頚の筋が過緊張して、硬化しているということは、身体の他の部位に何らかの問題があって、
それが頸椎の変位を引き起こしていることを示す―――モニターでもあります。
つまり、
○ 肩コリ」の多くは、他の問題が 症状として「肩」に反射している
と捉えた方が、理解しやすいと 思われます。
したがって―――肩コリを 即 肩の過緊張筋をゆるめるだけのアプローチでは、症状の慢性化や 他の部位への負の連鎖を生む結果を招くことにもなるのです。
つまり
肩に異常をもたらす原因となっている「他の部位の過緊張組織」に対して―――
●「ストレッチ」や「マッサージ系手技」などの 筋・筋膜をゆるめるアプローチを用いて対処すると、
● 肩に関わる組織の緊張は 自動的にバランスを回復していきます。
その後で、 さらにターゲットである肩の痛みを誘発している肩周辺の組織の緊張をゆるめることで、
●「痛み」などを軽減することができるようになるのです。